野山で探蛾、さほど大物ではない蛾たち(2013年4月20日)

バードウォッチャーが鳥を探すのを探鳥、蝶マニアが蝶を探すのを探蝶と言ったりするようだ。
すると蛾を探すのは探蛾というのだろうか。
試しにネットで「探蛾」を検索してみると、いくつかヒットした。やはり使われているようだ。
これからは、ご趣味は? と聞かれたら、
「タンガです」
と答えてみよう。もしかしたら短歌と間違えて、
「高尚なご趣味ですね」
と早とちりする人もいるかもしれない。
「では、最近詠まれた歌を一つ」
と請われた場合に備えて、一首準備してある(笑)。

「公園のトイレが綺麗になって蛾が見られなくなりつつあるのを嘆いて詠めり。

  山吹の 花は咲けども 公園に
    蛾のひとつだに 無きぞ悲しき」

…お粗末。
実際のところ、最近ときたら近所の公園内トイレの手入れが行き届いていて、蛾がなかなか見つからない。まったく、蛾の一匹もいない公園に誰が来るか! と悪態をつきながら思いついたのだ。

まあ、そんなわけで、やっぱり公園に行くより野山だ。大体見たいと思っている春の大物蛾は公園なんかにはいやしない。
そう思って郊外の野山や里山に出かけてみるが、見たいイボタガやエゾヨツメがそうそう見つかる訳もなかった。
それでもいくつか面白い蛾を見つけることができた。
フタトビスジナミシャクは、フトジマナミシャクなど似たようなナミシャクがいろいろある中で、模様が綺麗な蛾だ(写真1)。

▼写真1 フタトビスジナミシャク(2013年4月17日、あきる野市)
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オオシロアヤシャクはウスアオアヤシャクと同定が難しいが、とてもとまり方の面白い蛾だ。翅を目一杯広げてとまるのが特徴のようだ(写真2)。

▼写真2 オオシロアヤシャク(2013年4月18日、裏高尾)
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セブトエダシャクは林縁の電柱にとまっていた(写真3)。

▼写真3 セブトエダシャク(2013年4月18日、裏高尾)
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プライヤキリバは先日も紹介したが、ちょっと突つくと触角を見せてくれた。両櫛歯状なので♂と判断して良いだろう(写真4)。

▼写真4 プライヤキリバ♂(2013年4月18日、裏高尾)
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ウンモンスズメは今年初見(写真5)。昨年もこの辺で見つけた気がすると思って調べると、2012年6月4日に同じ塀で見つけていた。

▼写真5 ウンモンスズメ(ノートリミング、2013年4月18日、裏高尾)
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フクラスズメは成虫越冬なのでいつでも見られると言えば見られるが、口吻を伸ばしたところはなかなか撮れないかもしれない。
山道の脇のケヤキに、誰かがジュースをぶちまけたような跡があり、そこに吸汁に来ていたようだ。
口吻が2本の紐状のものが合わさっているように見える(写真6)。
フクラスズメは大きくなった幼虫もそろそろ見られる時期だ。

▼写真6 フクラスズメ 吸汁中(2013年4月18日、高尾山)
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写真7〜9の3種は初めて見た蛾だ。
シロテンクチバはオオシロテンクチバとの判別が難しい種だ(写真7)。

▼写真7 シロテンクチバ(2013年4月18日、高尾山)
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モンウスギヌカギバは、ウスギヌカギバと似ている。外灯の庇にとまっていて、かなり高い場所だったが何とか撮れた(写真8)。

▼写真8 モンウスギヌカギバ(2013年4月18日、高尾山)
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ハネブサシャチホコは山頂のトイレ外壁にとまっていた。緑色が綺麗なシャチホコガだ(写真9)。やっぱり緑色が入っているとかなりポイントが高い。これもちょっと突ついてみれば良かっただろうか。

▼写真9 ハネブサシャチホコ(2013年4月18日、高尾山)
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最後に今日のおまけ画像。
今日はニャンコではない。イタチだ。野生のイタチは初めて見た。道路を横切って林縁で少しの間立ち止まってこちらの様子を窺った後、林の中に消えて行った。イタチの顔は意外に可愛い。

◎イタチ(2013年4月18日、裏高尾)
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参考サイト:みんなで作る日本産蛾類図鑑

撮影機材:ニコンD7000 & AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

# by mikiosu | 2013-04-20 01:15 | | Comments(2)

春のトンボたち(2013年4月18日)

成虫で越冬するオツネントンボ類を除けば、トンボが出るのは早くても4月下旬〜5月上旬と踏んでいたが、ちょっと甘かったようだ。
今年のトンボが出る前に「トンボの季節に先駆けて−−トンボ編」「同−−イトトンボ編」と題して昨年撮影したトンボの紹介を目論んでいたのだが、時期を失してしまった。
もうトンボが出ていたのだ。
4月13日、ギンイチモンジセセリを探して郊外の河川敷を歩いていると、トンボが足元から飛んで逃げるのを2〜3度見かけた。
今年はまだトンボを見かけていなかったので、何とか1匹くらい撮影したいと追いかけてみたところ、あまり遠くまで飛んで行かない個体がいた。
草の上にとまったところを撮ってみるとダビドサナエ♀だった(写真1、2)。
一応飛べる状態ではあったようだが、とまったところを見ると翅の畳み方も変だし、複眼の色もまだ出ていない。多分羽化間もない個体なのだろう。
念のため昨年撮った個体と比べてみる(写真3)。
昨年は5月11日が初見だったが、それほど熱心に探していた訳でもないので、今年の初見が早いとは一概に言えないかもしれない。
ダビドサナエはなかなか愛嬌のある顔をしている(写真4)。(写真4はダビドサナエ♀ではなく、クロサナエ♀の間違いのようだ)
ダビドサナエ♂の腹部には♀のように黄色い斑紋が入っていないので判別できるようだ(写真5)。
(写真5もダビドサナエ♂ではなく、クロサナエ♂のようだ)

▼写真1 ダビドサナエ♀ 羽化間もない個体?(ノートリミング、2013年4月13日、八王子市)
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▼写真2 同上(2013年4月13日、八王子市)
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▼写真3 昨年のダビドサナエ♀(2012年5月11日、裏高尾)
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※ニコンD90 & タムロンSP AF90mm f /2.8 Di MACRO

▼写真4 昨年のダビドサナエ♀ 顔面(2012年5月26日、奥高尾)(→クロサナエ♀に訂正)
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※ニコンD90 & タムロンSP AF90mm f /2.8 Di MACRO

▼写真5 昨年のダビドサナエ♂(2012年5月26日、奥高尾)(→クロサナエ♂に訂正)
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※ニコンD90 & タムロンSP AF90mm f /2.8 Di MACRO

4月17日には、春の大物蛾とトンボとの出会いを期待して郊外の里山に出かけてみた。
大物蛾には出会えなかったが、トンボにはたくさん出会えた。たくさんと言ってもほとんどはシオヤトンボだった(写真6〜8)。
♂は縄張りを張って飛び回っている個体が多く、のんびりひなたぼっこしているのは♀が多かった。
トンボの♂は未成熟の間、♀と同じような色をしている種がある。このような場合、腹部先端の形状などで判別するが、よく観察しないとはっきりとは分からない場合が多い。
写真8はシオヤトンボの♀と思うが、写真9はどうもシオカラトンボの♀のようだ(通称ムギワラトンボ)。→(写真8は未成熟のシオヤトンボ♂と思われる)
撮った時には気が付かなかったが、家でよく写真を吟味すると、腹部の幅、模様が微妙に異なるし、腹部先端の形状も違っている。色もシオヤトンボ♀は先端が黒っぽく、シオカラトンボ♀は明らかに白い。
この2種は胸部(翅胸)の模様でも判別できるようだ。また、シオヤトンボは♂♀ともに翅の基部が濃い橙色をしていることも識別ポイントになる。
こんなにたくさん識別ポイントがあるのに、野外で撮った時には気が付かなかったのだから、一見似ているとはいえ、うっかりにもほどがある。
トンボの同定も意外に難しいものだ。ごく普通種と言えるシオヤトンボとシオカラトンボの判別でさえなかなかややこしいのだから、他の種の難しさは推して知るべし…ということ。
それでも、いろいろなポイントで識別できるようになると、少しは正確に同定できるようになるのだろう。何事も経験を積むことが大事だ。
(注−−この記事を一旦アップしてから後で気が付いたが、縁紋の色も違うようだ。シオヤトンボの縁紋は黄褐色で、シオカラトンボは黒だ)

▼写真6 シオヤトンボ♂(ノートリミング、2013年4月17日、あきる野市)
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▼写真7 同上(2013年4月17日、あきる野市)
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▼写真8 シオヤトンボ♀(2013年4月17日、あきる野市)(→未成熟のシオヤトンボ♂に訂正)
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▼写真9 シオカラトンボ♀(2013年4月17日、あきる野市)
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前述のように、昨年ダビドサナエを初めて見たのは5月11日だが、5月7日には既にカワトンボを見ていた。
今年はまだ今のところカワトンボの発生は確認できていない。
カワトンボはすぐに逃げるのが癪に障るので、昨年も一昨年もそれほど熱心に撮っていなかった(笑)。そのため手元にあまり良い写真がない。今年は少し気合いを入れて撮ろうと思っている。

※1 その後本稿に掲げた写真4、写真5がダビドサナエではなくクロサナエの間違いではないかということに気が付いた。本文中も青字で訂正しておく(2013年4月23日)。
※2 その後本稿に掲げた写真8が、シオヤトンボ♀ではなく、未成熟のシオヤトンボ♂の間違いではないかということに気が付いた。本文中も青字で訂正しておく(2013年5月17日)。

参考文献:『ネイチャーガイド 日本のトンボ』(尾園暁、川島逸郎、二橋亮、文一総合出版)

撮影機材:※印以外はニコンD7000 & AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

# by mikiosu | 2013-04-18 23:23 | 蜻蛉 | Comments(0)

春の大物蛾・イボタガ、初見・初撮り(2013年4月16日)

このところ蝶の話題が続いたので、そろそろ何か別の昆虫を取り上げたいと思っていた4月15日、トンボが発生しているかどうかチェックを兼ねて裏高尾方面へ遠征してみた。そこでついに大物に出会った。
イボタガだ!
道路脇の地上20センチくらいの高さにとまっているのを見つけたのだ。
通り過ぎかけて、ふと眼の端に何か見えたような気がして振り返ると、そこにいた。
ああ、よく気が付いたと自分を褒めてあげたい(笑)。
しゃがんで撮るのにもまだ低い位置にいたので、道路脇に横たわるようにして撮る(写真1〜4)。こんな時のためにいつも汚い服を着ている(苦笑)。

▼写真1 イボタガ 自然光にて(2013年4月15日、裏高尾)
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▼写真2 イボタガ ストロボ撮影(2013年4月15日、裏高尾)
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▼写真3 イボタガ 触角(2013年4月15日、裏高尾)
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▼写真4 イボタガ 脚&触角(2013年4月15日、裏高尾)
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オオシモフリスズメ、エゾヨツメ、イボタガ。これらを春の大物蛾の御三家と言って良いと思う。
このうちオオシモフリスズメは、長野県南部以西に生息するらしいので、都内で見つけられるとすれば、エゾヨツメとイボタガである。
蝶や蛾を撮るようになって、いつの頃からかこれらを見てみたいと切に願うようになった。
特に昨年春はかなり意識して探したが、残念ながら出会う機会がなかった。
今年は花が咲くのも早ければ各種の昆虫の発生も早く、4月の半ばを迎えてかなり焦りはじめていた。
その矢先の突然の出会いである。
嬉しい!
まあ、蛾に興味のない方には、こんなものに出会って何が嬉しいのかと思われるだろう。
しかし、イボタガは蛾を見つけることに喜びを感じる人間にはある種特別の存在だ。
この芸術的な翅の模様…、曲線を多用したデザインはアールヌーボー様式だろうか。金地に黒の色使いはクリムトか。
いずれにしてもこの蛾の美しさはシンプルな美とは対極にある、豪奢な美だ。
イボタガは英語ではOwl moth(フクロウ蛾)というらしい。
前翅の眼状紋はフクロウの眼、翅を広げていないので分かりにくいが、腹部が嘴というわけだ。
前翅先端には鳥の翅の模様まである(写真5)。
ちなみに、イボタガは♂も♀も触角が櫛歯状に発達している。これだけでは♂か♀か分からないようだ。

▼写真5 イボタガ 前翅右側(2013年4月15日、裏高尾)
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帰宅後に思ったが、突ついてもう少し後翅を出してもらえば良かった。
これまでの経験だと、初めて見た昆虫は、一度見かけると続けて見かけることがある。また近いうちに見かけることがあるだろうか。
その時にはもう少し翅を広げた写真も撮ってみたい。

ついでながら、この日も含めて、4月中に撮った他の蛾の写真も少し紹介しておく(写真6〜13)。

▼写真6 クロフオオシロエダシャク 電柱にて(2013年4月15日、裏高尾)
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▼写真7 モミジツマキリエダシャク♀ 葉上にて(2013年4月11日、武蔵野市)
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▼写真8 フトジマナミシャク 木の幹にて(2013年4月11日、武蔵野市)
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▼写真9 カシワキボシキリガ 駅舎の窓にて(2013年4月9日、神奈川県)
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▼写真10 カシワキリガ♂ 公園内のトイレにて(2013年4月5日、武蔵野市)
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▼写真11 テングアツバ 電柱にて(2013年4月15日、裏高尾)
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▼写真12 ノヒラトビモンシャチホコ 石川会長の手乗り(2013年4月9日、神奈川県)
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▼写真13 イカリモンガ♂ 林縁の葉上にて(2013年4月15日、裏高尾)
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写真13のイカリモンガにはちょっとした思い出がある。
この蛾を初めて見たのは2011年7月に信州方面に旅行に行った時のことだ。
標高約1000メートルの緑地で、葉上にとまるこの蛾を見つけた。
昆虫写真を撮るようになってからの信州旅行もこの時が初めてで、東京辺りでは見られない珍しい蝶を撮影できたと思い込んだものだ。
帰京後に蝶の図鑑を見ると、どこにも載っていない。ネットで蝶の画像を検索しても分からない。
分からない訳だ。蛾なのだから。
イカリモンガを初めて見つけて、同じような経験をされた方も多いのではなかろうか。
イカリモンガは昼行性(昼飛性)の蛾で、写真のように蛾では珍しく翅を閉じてとまる。
昼行性の蛾は蝶のように綺麗な模様のものが多いのだ。
その後は何度かこの蛾を見かけているが、この日撮った個体は、腹部先端から毛束が見えていた。
これはヘアペンシルのようだ。
この蛾は♂が♀を惹き付けるタイプの蛾で、このヘアペンシルを断続的に出し入れして性フェロモンを放出し♀を呼ぶらしい。従ってこの個体は♂と言うことになる。
このヘアペンシルは出し入れできるらしいので、毛束が見えないからと言って一概に♀とは断定できないようだ。
ヘアペンシルはアサギマダラやオオゴマダラなど一部の蝶の♂にもある。まったく昆虫の世界は奥が深い。

最後におまけ。
◎今日のニャンコ ♪(2013年4月15日、裏高尾)
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参考サイト:虫Naviみんなで作る日本産蛾類図鑑

撮影機材:ニコンD7000 & AF-S VR Micro-Nikkor 105mm f/2.8G IF-ED

# by mikiosu | 2013-04-16 05:44 | | Comments(4)